何年経ってもうまく歌詞にできない出来事があります。高3のころのことです。
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そのころ僕には好きな人がいました。
その子は眼鏡をかけていて猫毛のロング、よくツインテールをしていました。色白で制服は着崩さずに来ている真面目そうなよくいる女の子でした。
でも一つだけ違うところがありました。
色んな異性と関係を持っていたことです。
それでも僕はその子のことが好きでした。
何とかメールなどで仲良くなりよく学校外でも会えるようになりました。
会うのは決まって学校の近くの城跡。
塾で24時まで自習すると親には言って21時くらいに抜け出して城跡で僕らは待ち合わせしていました。
城跡は丘の上にあり街が一望できる位置に街頭が一つ、ベンチが一つありそこが僕らの詳細な待ち合わせ場所でした。
そこで僕はその子の相談に定期的に乗るようになっていました。今思えば数あるその子の関係の中の「相談に乗る係」だったのかもしれません。
高校3年生の春ごろから半年ほどそのような関係は続きました。受験勉強の話、家庭の話、そして色んな異性との関係の話を聞かされました。僕はつらいはずなのに僕だけにその話をしているのだと思うと耐えることができましたし優越感さえ感じていました。これでいいと思ってしまったのです。
告白しても直感で可能性はないことはわかっていました。それならいっそ好きという気持ちは伝えず、今の不思議な関係を維持しようと思ったのです。いや、諦めたといったほうが正しいかもしれません。
ある日僕は「もっと自分を大切にしたほうがいい」というような旨の文脈を何気なくポツリと放ちました。
その子は少し街を見てベンチで座り直し、間をおいて「わかった」と言いました。
春から半年が経ち夏は終わりかけていましたが生き残りの藪蚊が僕の手の甲に止まり血を吸っていましたが何となく眺めて時は過ぎていきました。
その日はいつもとは違う雰囲気で夜の城跡での相談会は終わり城跡の入り口に停めてある二人の自転車に向かって帰路につきました。
自転車に跨りそれぞれに家の方向に向かってペダルを踏み帰ろうとしたとき
「もう会えなくなるかも、今までありがとう。ありがとう。じゃあね。」
とその子は言いました。暗くて顔はあまりはっきりと見えませんでしたが何か決心したような声でした。
僕のその日の言葉が決心に作用したのだ、というほど自惚れてはいません。おそらく前々から決心という名の決壊に向かってコップに水が注がれており僕の一滴の言葉がコップから水が溢れ出す要因の一つの可能性があった、程度のことなんだと思います。
だけど確かにその子は決心したのです。
次の日から僕らは会わなくなりました。高校3年生の夏が過ぎて受験勉強が本格化したせいもあったのかもしれません。
蚊に刺された手の甲のかゆみはひどく、掻きすぎによってかさぶたになっていました。
あれから数日たったころ、その子が一人の異性と付き合ったということを友人から聞きました。自分を大切にすることを選んだんだと思いました。その異性が僕ではないことに対してやはり悲しさ、悔しさ......とは違う名前のつけられない感情がありました。確かに言えることは寒色傾向の感情です。
ただ幸せを願っていたことも事実です。よかった、ホッとしたというのも事実です。
きっと長い時間をかけないと得られない感情を体験したせいか城跡で会っていたことが幻のように思えてきたのを覚えています。しかし手の甲のかさぶたはあの夜確かに二人で会っていた最後のかすかな頼りない証拠でした。
僕は高校を卒業するまで何とかその傷が治らないようにかさぶたができては剥がして、もう痒くもないのに秋も、冬も手の甲を少し掻いてその子と過ごした微かな証拠が消えないように足掻いていました。
そして高校を卒業しました。僕らは違うクラスであったこともありますがあの日から一言も話すこともなく高校生活を終えました。
手の甲の傷はいつの間にか治りきっていました。小さなケロイドになっていましたがあまりに小さく傷跡も浅いため、いつか消えてしまうことは容易に想像できました。
それから数年が経ち、成人式で久々にその子を見ました。眼だけは合いましたが一言も話はできませんでした。
きっとその子も後ろめたさとかがあった可能性があります。僕の好意については気づいていたはずです。そしてその行為によって放たれた言葉を受け取り、実行し他だけです。僕の好意から生じたあの言葉によって、自ら自分とその子が繋がれる可能性をつぶしたわけです。その子はきっとその事を感じ取っているはずです。もしかしたら思い過ごしかもしれません。
そしてその時高校の時の人とは別れて大学で知り合った人と付き合っているという話も聞きました。ですが特に感情の動きはありませんでした。人にはそれぞれの道があり、もう距離的にも環境的にもその子には干渉できないと理解していたためです。
それから数年経ち、今に至るわけですがやはり時々まだ思い出してしまいます。手の甲のケロイドは完全に消えてなくなり二人で出会った証拠も無くなりました。
記憶の鮮度も落ちて行っているのを感じます。城跡には今でも帰省した際に足を運びあのころと同じ場所から街を眺めたりしています。が、視覚からの情報の感じ方が変わっていっているのを実感します。ただ、丘の上からの景色を見ているだけ。そんな気持ちになりつつあります。本当はもっと色々あったはずですが視覚の受信主である僕でさえ時間経過により忘れてしまっていることが多く、受動的な存在である田舎の街の景色においては時間の流れに対抗することなどもちろんあり得ないからです。
でも、これでいいと思うようにしています。あの子もきっとどこかで幸せに生きている。それでいいのだと思います。
手の甲の傷はどっちの手にあったのかさえ今はもう覚えていません。僕にとってもきっとそういうことなんだと思います。
高校の頃の片思いが綺麗に少しずつ消えて行っている。そんな話でした。
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これを歌詞にしたいけどこれくらいの文で書かないと伝わらない...。いつか歌にすることを目標の一つにして活動していきたいです。なんだかんだ僕の音楽の根本にもかかわってくる内容なので...。
あの後も色々恋愛したけどこれだけは特別なんよな~不思議。固執はしませんが大切にしていきたいです。
そういえばあのころ、若干あの子も僕のこと好きなんじゃないか...?とわずかに期待していました。(思わせぶりな態度も多々あったため)でもそうではなかったのでそれ以来どんなに女子と仲良くなって、どんなに思わせぶりな態度をとられてもその人は僕のことを異性として好きになっているわけではないと念頭に置くようになりました。よく異性に優しくされて恋に落ちる~みたいな話がありますが僕には効きません...!ただこっちだけ勘違いするのは嫌なので話半分でいつも対応するようにしています。そういうところからすべてが適当になったのかもしれません。なので一人ならめちゃ真面目です。
まあよくわからんけど恋愛ってすごいエネルギーをもっているよね~って話でした。多分。
では!!!!!!!!!(仕事が鬼暇)