患者さんがいない時に書く日記

趣味多めの薬剤師の暇つぶしブログ

数分間のエール 感想

昨日、前から気になっていた映画「数分間のエールを」を見てきました。

 

動画師(アニメーターの域かも)、音楽クリエイターが物語の中心となっており、自分もクリエイターの端くれであるため滅多に目的を持って映画館には行かないタイプなのですがこの映画を見るためだけに足を運びました。

 

以下ネタバレを含む可能性があります。

 

さて、内容としてはMV制作に没頭する高校生の少年がある日、ストリートライブをしている女性(翌日、英語教師として赴任してくる先生であった)に出会う。

あまりにその歌に感動しその曲のMVを作らせて欲しいと頼み込む。

先生は音楽の道を諦めていたことや初対面の人間からの申し出ということもあり、なかなかMV制作の申し出を承諾することはできずにいた。

しかし少年の本気が伝わりMV制作が進むことに。

少年は俄然やる気を出し寝る間も惜しんでMVを制作していく。歌詞を自分なりに読み解いて考察し、歌詞という「文字」をPC内で「映像」に変換していく。

 

数日後ようやくMVが完成し先生に見せると「君らしくていい作品だけど...。歌詞、ちゃんと聞いてくれた?」と言う。

 

この曲は先生が音楽を諦めるかどうかの瀬戸際にいた時の曲であった。創作をやめるかやめないか。葛藤や諦め、しかしまだ音楽を続けていきたいという渇望、わずかな希望、様々な感情が入り混じった曲である。

一方少年の現状は、とにかくMV制作が楽しくて時間さえ忘れて誰かの感情を動かすことができるMVができると信じて、真っ直ぐな気持ちで日々創作をしている。

先生もかつてはその少年のように真っ直ぐ、諦めや絶望など知らずに創作活動を行っていたため少年の気持ちはわかり決して少年を責めることはなかった。

しかし「そのMVは公開して欲しくない」と伝える。

少年は途方に暮れて帰宅、途中友人と出会う。

その友人は天才的に絵が上手な親友だった。

 

友人は「あのMV、断られたんだろう?」と言い当てる。

少年は意気消沈している中、なんでも見透かしているような友人に腹が立ち「いいよな、お前には才能があって...」と悔しさやイライラを一気に吐き出してしまう。

しかし友人は「絵がうまいと気が付かなければよかった。」

「絵が描けるからなんだ、偉い人に褒められたからなんだ、自分が何を作りたいのかもわからないのに」

「先生のあの歌は、終わりの歌なんだよ」

そう言われ少年は何も言えなくなる。

 

翌日、少年は親友がいる美術室に足を運ぶ、しかし友人は不在で部屋には誰もいなかった。

教室には親友の練習用のスケッチブックが置いてあった。しかも50冊以上。

才能だけじゃない、努力もしていることに気づく少年。

美術室から出ようとしたときに先生とぱったり出会う。

先生はMVについてぽつりぽつり話しだす。

そして「彼(友人)、美大に行かないらしいよ」と伝えられる。

才能があるのに夢とは違う道へ進んだ。それはこの女性と似ていた。

だから友人に色々見透かされていたのだ。「諦め」や「挫折」をまだ知らない少年と、それを経験した友人や女性。

少年は「なんでMVを僕に頼んだんですか?」と先生に問う。

先生は何度も何か言おうとしては口を噤み、「なんでだろうね」と言った。

 

心ここにあらずになってしまう少年であるが、その傍ら同級生でバンドをしている友人のためMV制作をしており、完成したためデータを渡したところ部室でMV鑑賞会をするから来るように言われる。

乗り気ではないものの部室に行ってそのバンドメンバーとMVを鑑賞。

するとバンドメンバーは感情豊かに反応。泣いたり感嘆したり。確実に感情を動かすMVとなっていた。

バンドメンバーの友人は言う「前にMVをお願いした時も初めはイメージとなんか違うかも、って思った。でもこういう解釈があってもいいんじゃないかって思った。元気がでるMV。曲を応援する映像だ。」

少年は再度先生にMV制作をさせて欲しいとお願いしに行く。

↓なんやかんやあって...

MV完成。先生も納得。先生は学校をやめて再度音楽の道を歩む

クリエイターとしていつかまた再開しようと約束をして終わり。

 

大雑把に解説するとこんな感じですね。

登場人物は

・MV制作に没頭する主人公の少年

・音楽の道を諦めた先生

・才能はあるがやりたいことが見つからず美大に行かない選択をした少年の友人

・以前から少年にMV制作をしてもらっているバンドをしている同級生

以上の4人となっています。

 

主人公の少年はMV制作という沼にはまったばかりの一番楽しい時期真っ只中にいる状態。そして自分のMVで人の感情を動かしたいという確固たる信念も持っている......。素敵です。眩しい...。でもクリエイターはきっとみんなどこかでそう思っているはずです。たぶん。私もご飯を食べるより、寝るより作曲が好きだからよくわかります。

寝る時間が本当にもったいない。ブルースクリーンで絶望する。わかります。

 

そして先生。親からは音楽のついては否定的なことをよく言われていた様子。100曲目を作り、「これでうまくいかなければ教師として就職する」と親と約束しおそらくうまくいかず就職。赴任前日に最後にストリートで歌っているところで主人公と出会う。

まず思ったのが...。

教師以外の仕事なら、というか副業可能な仕事を選択してもよかったんじゃないか...?と思いました。仕事か音楽どちらか一本でしかやらない。ではなく、平行してやっていくのはダメだったの...?まあ、そうしてしまうと映画にならないし仕方がないけど...。今の時代、音楽一本の方が珍しいくらいみんな仕事と音楽を両立してやっている気がします。というか僕もそうですし僕の周りもほとんどがそうです。僕は音楽一本でやっていくのはあまりにリスクが高すぎると高校の時に判断して音楽と両立できそうな仕事として薬剤師を選んだ過去があるのでここだけやっかかりました。

が、仕事と音楽を両立!なんてものはストーリー的には絶対にありえない。というかそれで話が終わる、というか始まりもしないのでこれでいいんです...!

 

もう一つ引っかかったところは初稿のMVを見たときに自分の曲の歌詞をくみ取ってくれていない...!となった件です。

まあ創作を誰かとする際にはよくあることです。

「なんか想定していたの違うな...」みたいな。よくあります。

ただ、よくあることなので事前に”打ち合わせ”を必ずします。

僕は自分でMVも作るのでそういう打ち合わせはしたことないですが周りの話を聞いていると作曲者が絵コンテのようなものを書いてMV制作の指示をすることもあるらしいです。なぜなら自分の意思汲み取ってもらうことって本当に難しいからです。

「晴れた空」と言っても雲一つない快晴なのか、入道雲や飛行機雲が浮かぶ夏のカラッとした空なのか、深い青なのか薄い青なのか、人によってイメージするものが違うと思います。文字から情景を思い浮かべることは簡単かもしれませんがそれは十人十色だからこそ簡単なのかもしれません。

作者が思い浮かべている情景を思い浮かべろ。と言われたら急に難しくなるはずです。

 

だから先生は少年と事前に打ち合わせをするべきだったのです。

しかし、ストーリー的には少年は先生の歌を聴いて稲妻に打たれたような衝撃、感動をしMVを作りたいと懇願...。

もし、自分にここまで熱量がある人が来たらさすがにすべて汲み取ったうえで感動してくれたのでは...?と思うかもしれません。多分そんな感じで先生も安心して任せてしまったのかな...。初稿のMVが却下されるシーンはだいぶ見ていてつらかったですね...。

クリエイターは自分が作るものは絶対に良いものだと思って完成させます。そもそもよくないものは完成させないので完成したものは良いものなはずです。

それを却下されたときはやっぱりだいぶショックを受けます。コンペとか通らなかったときとかも同じような感じでブルーになりますね...。私も経験がまだまだ浅いからそういうので一喜一憂してしまうのかもしれませんがあのシーンにはだい~ぶ共感できました。

 

あと、先生、絶対SNSとかやってなくてブランディングがあまりうまうなさそう。やったら絶対伸びるからやってほしい...。

 

ちと野暮なこと書きすぎましたがストーリー的にはあのような立ち回りがやっぱり正解なんだと思います。(事前に打ち合わせして初稿でいきなり最高のMVが完成!→finとか面白くない...!)

 

天才的に絵がうまい友人

この子が良い立ち位置なんですよね~。先生と少年の中間にいるような、そんな存在で物語を進めるための重要人物です。

主人公と同じ立場でありながら才能を持つ、しかし先生と同じように夢をあきらめて普通の大学に行くことを決めたという。主人公よりも多くの葛藤やあきらめを経験してきた人物です。

だからこそ主人公の気持ちも俯瞰してみることができ(決して見下しているわけではない!!!!!)心の底から応援している良き理解者です。

そして優しい...。思うことがあってもはっきり言わない。......優しいのかどうなのか...。多分自分で気づいてくれるのを待ってくれてるタイプなのかな。でも時にはガツンと言ってくれる、本当に大人なやつです。

 

主人公にMV制作をしてもらっているバンドの子

この子は主人公を+の方向へ向かわせるための立ち位置です。主人公のMVで心を動かされた人の一人でそれは主人公の創作に対する信念でもあるので、そういった存在はやはり勇気になります。登場シーンは少なめですが+への起点では重要な人物です。あとかわいい。

 

いや~本当にいい映画でした。映像が本当にきれい。光や光と影の境目の書き込みに注力している映像だと思いました。

現実ではありえない色が影と光の境目に使われていることがあったのですが、あの映像においてはあれが正解なんだと思えるほど綺麗になじんでいました。

あと部屋を舞う埃に反射する光など...。光と影に対する執着が本当にすごかったです。

あとCGならではの無機質さもほとんど感じられず、アニメのようなコミカルな部分も多々ありCGもなかなかいいな、と思いました(今まではCG結構苦手だった)

全体を通して、クリエイターの楽しい部分や苦悩を約1時間という短い時間でうまくまとめられた作品だと思いました。

クリエイターに限らず、なにかに打ち込んだことがある人や何かに挫折したことがある人、これから何かを始めようと思っている人には是非見てほしいです。

 

私はとにかくモチベーションがありました。創作を頑張っていこうと思いました。

 

あと主人公みたいな人多いんじゃないかな...。まっすぐ、沼にはまったら時間も忘れて作業するくらい夢中になるけどやっぱり周りには自分以上にすごい奴はたくさんいてその中に近い関係の人がいると劣等感を抱いてしまう人...。

私はめちゃくちゃ負けず嫌いなので、友人が自分よりも何かで優れているとすぐに劣等感を感じてしまい胸がざわざわします。食欲がなくなるというか...。

でも友人なわけで普段は仲いいですしそれは本心で仲がいいです。でも優劣がついて自分が劣側になるときにおいてだけは別...。

そういう正負の面でも感情移入しやすい作品でした。

 

ってかMVが良すぎた。めちゃわかるんだよな~とにかく「新規作成」していくしかないんだよな~。やっぱりうまく曲ができないときは多々ありますがそれを打開する方法は死ぬほど曲を作っていくしかないんですよね。

今まで3年間ほどいろんな曲やMVを制作してきましたがやはりモチベの低下はあります。うまくサビができなかったり、いい感じに作れていたデータが飛んだり、何も思いつかなくなったり。

そういう時は気分転換をするといいよ!なんてよく言いますし自分も結構気分転換をしてPCから離れることがあるのですが根本解決にはなっていません。

僕の場合「良い曲ができること」がモチベにつながるから、まず良い曲を作らないといけません。だからどんなに不調でも「新規作成」していくしかないのです。あそこ、本当に重なったな~ウルっと来ました。

 

あの映画はクリエイターや何かを頑張る、頑張ろうとしている、頑張ってきた人へのエールなんだと思います。

クリエイターの苦悩を表現した作品をほかにも見てみたいのでお勧めなどありましたら教えてください~!